Creaformが、オリンピックレベルのトリマランの試作品作成にリバースエンジニアのナレッジを提供しました。この試作品は障がい者スポーツ選手が使用できるものにする予定です。
MetraSCAN 3Dとリバースエンジニアリングを応用して、Creaformとエコール・ノルマル・シュペリウール・カシャン校(フランス)の学生が、新型トリマランの改良に取り組みました。このトリマランはKiteboadspeed(KBS)と呼ばれています。 ハル(船体)の再設計にあたり、トリマランに新たなミッションが割り当てられ、そのミッションを障害者チームキャプテンに適用することになりました。設計では、Creaformが3Dスキャニングを担当し、学生がリバースエンジニアリングを担当しました。
Kiteboatspeedプロジェクト:人間と技術の課題
KBSチームは2007年、ホイルを装備し、凧によって船体が引っ張られるという、高性能ボートの開発に着手しました。このアイディアはChristophe MartinとChristophe Balloisの2人のクリエーターによるもので、新しい形のナビゲーションを目指すものです。« 私たちの課題は技術的革新とスポーツの挑戦が合わさったものなので、現代的なものと言えます。 さらに、障がいに負けずに自己超越を目指すことにより、人間の経験に関わる課題でもあります。» チームでは、今後数年以内にKBSの設計をベースとしたボートがレガッタに登場するとみています。エコール・ノルマル・シュペリウール・カシャン校と協力して、KBSチームはオリンピック競技でも使用が認められる新しいタイプのボートの開発に重点的に取り組んでいます。キャプテンが男性、女性、障がい者のいずれであっても、同じように利用でき、同じ性能を引き出せるようにすることがプロジェクトの目標の1つです。そのため、性能とキャプテンの安全の両方を保証する試作品の開発が求められます。
エコール・ノルマル・シュペリウール(ENS)カシャン校の輝かしい歴史
ENSカシャン校は歴史的に質の高い教育で定評があります。 1891年、最初の学部が設立されました。ENSはフランス国内に複数あるグランゼコール(高等専門教育機関)のひとつで、技術教育の専門家養成を目標としています。1932年、この機関はl’École Normale Supérieure de l'Enseignement Technique(ENSET)となりました。1985年、ENSETカシャン校はENSカシャン校となり、他のENSと同等のステータスが与えられ、科学、文化および専門教育の分野で教育をおこなっています。 ENSでは、公共および民間からの教師や研究者に対する教育のほか、産業および営利団体をはじめとするいろいろな組織の管理者(公共および民間セクター)に対する教育も実施しています。
プロジェクトでのリバースエンジニアリング
KBSチームが提示した技術的および機械的ニーズに対応するため、既存構造の3Dモデルが必要でした。ENSカシャン校とKBSチームはハル(船体)と凧に関連するハイブリッドソリューションの開発を目指しています。 さらに、キャプテンのニーズをボートの改良に反映するため、トリマランの分析が必要でした。
2014年、ENSカシャン校はCreaformにプロジェクト参画を依頼しました。 « チームのプレゼンテーションやコミュニケーション用に、既存のモデルをスキャンして、改良を仮想的にテストし、3Dプリントを用意して、全ての部品を組み立ててミニチュアモデルを作成する必要がありました。» 目標のうちの1つは、CADモデルを作成して、さまざまな障がいを持った人たちに対応するボートに適用することで、ENSの学生が3Dモデル作成に取り組み、リバースエンジニアリングを実行するには、複数の部品を3Dスキャンする必要があります。
ENSカシャン校のLaboratoire Universitaire de Recherche en Production Automatisée(LURPA)にはCreaform C-Track デュアルカメラセンサのみがあったため、2名の技術専門家が現場を訪問し、MetraSCAN 3D光学CMMスキャナーとMaxSHOT 3Dフォトグラメトリーシステムを使ってスキャンを実行しました。 Creaform’s MetraSCAN 3Dの精度とMaxSHOT 3Dの性能を組み合わせて、トリマランのスキャンは高い精度で完了し、従来型の測定システムでは十分な結果が得られなかったと思われる条件も克服しました。
リバースエンジニアリング:第2の生命を吹き込むスキャン
チームが思うように作成できなかった模型を製作するため、まず、トリマランを分解しました。これで、Creaform専門家はボートの2つのフロート、アームおよび中央のハル(船体)を個々にスキャンできるようになります。
トリマランのハル(船体)は、以下の手順でスキャンしました。
- ハル(船体)の計測器具:ゲージ、ターゲットおよびレファレンスターゲットの配置。

- 2- CreaformのMaxSHOT 3Dを使ったフォトグラメトリー。

- CreaformのMetraSCAN 3Dを使い、ハル(船体)の半面をスキャン。

- 点群の取得はCreaform専門家が実施。

- メッシュ処理。
- ハル(船体)が左右対称のため、データを反転させてハル(船体)全体を再構成。

- ABS樹脂を使って、ボートのハル(船体)とその他の部品を3Dプリントし、試作品を作成。
- 部品の表面処理と組み立て。

大満足のチーム
上記の成果にチームは大いに満足しました。 ついに3Dプリントに成功し、部品を組み立てて、プレゼンテーションおよびコミュニケーション用のミニチュアモデルを作成することができました。 2014年秋には、トリマラン構造の破壊点分布を明確にし、3D修正の完了後、シミュレーションを実施する予定です。
Creaformの測定ソリューションを利用すれば、トリマランの大きさに近い6m x 5m x 1mの寸法の容積をスキャンできます。さらに、モデリングソフトウェアを使って3D形状を再形成することもできます。しかし、この工程には長時間を要し、ボートのハル(船体)とアームの複雑な形状を考えると、3Dモデルの作成には相当な困難が伴うと思われます。今回の経験から、Creaformの測定ソリューション独自の機能により、モデルに欠損があったり、そもそも存在しないような、不安定な環境条件下であっても3Dオブジェクトを再現できることが明らかになりました。
ENSカシャン校の学生にも、このプロジェクトの活動が有益な学術的経験となります。 まず、実際のプロジェクトで学術的着想を応用する機会が得られ、次に最新のスキャン機器の操作に習熟できます。
Creaformと教育分野
光学寸法測定ソリューションは測定市場では比較的新しいものですが、今後確実に定着していくと思われます。光学測定技術は特に産業用途における将来の寸法測定方法であると、多くの品質管理専門家および設計専門家が考えています。Creaformは誰にとっても使いやすく、そして精度の高いポータブル3D光学測定機器をご提供いたします。
Creaformの3D光学測定および3D技術は、測定業界で最新トピックとして繰り返し取り上げられており、実際に、2005年以降、弊社の製品は世界各地の機関で次々に採用され、ユーザーを対象に基礎トレーニングを実施しています。最新技術に常に対応しようと働きかけていただくと同時に、研究スタッフ、教員および学生の皆様が最新機器にご理解を示していただき、それに習熟していただくことが大切です。
ENSカシャン校とのプロジェクトが終了してから1年後、凧の遠隔操作ソリューションが検証されました。このソリューションは、2014年秋に実機テストに使われる試作品にも適用されます。
2014年秋には、トリマランの破壊点分布を判定し、3D修正を考慮してシミュレーションを実行する予定です。